ごめんなさい。 そして新たな怖さ
退院2日前。最後のレントゲンを見せてもらい、術後の様子を説明してもらいました。術後は良好で、再建した靭帯もしっかり付着しているとのことでした。先生の説明の後、自分自身で思ったのは
ごめんなさい。
という罪悪感の気持ち。入院前半は退院の頃には「今後頑張るぞ!」みたいになると思っていたので、このような感情は正直意外で、内心びっくりしました。
◯ごめんなさいの真意
スポーツを続けている選手にとって、キャリアの中で怪我は本当に付きもの。中でも、今回の前十字靭帯断裂は多くの選手が負ってしまう怪我。多岐に渡る手術方法の中、今回は人工の腱とハムストリングスの腱を膝に移植し、金属で止める術式を選択しました。
五体満足
ありがたいことに健康に生まれた時は、約30年後に金属を入れるなんて思わなかったと思います。他のもっと大きな怪我で、ボルトを何本も入れないといけない怪我とに比べると本当に小さなものかもしれないけど、「30歳手前にして、生まれた時には無かったものを身体に入れて生きていく」ということは、「親不孝」そして「ごめんなさい」と正直思いました。
◯怖さ
術後4日目からは、ありがたく補強系を中心に、大量のトレーニングメニューを。
「1:3=リハビリ:トレーニング」
ぐらいの比率で、一心不乱に取り組むと、気づけば夕方になる毎日でした。(誰だよ入院暇だよって言った人。笑)
できないことをできるようになる喜び。はもちろんあるものの、特に膝周りに荷重がかかる”目先の怖さ”は常に感じました。目先のことは、その場でやってみて感覚を取り戻すのだから良いんだけど、過去のスキーの滑りや、トレイルの動画を見ると、大好きな競技なのに、この動きができるのか?という”未来の怖さ”に押しつぶされそうな感覚なのが事実です。
◯受け入れる力が大切
よくいろんな人からかけられた言葉で「強くなって復活」という言葉がありました。
そのためにも手術まで色んな本を読み、怪我した人のブログを読み、靭帯を勉強して、痛い手術、痛く辛いリハビリへの準備をしました。
でも、物理的な痛みへの対処療法は間違ってました。物理的な痛みを超えるより大切なことは、現実を受け入れられない気持ちの痛みへの準備をすること。
・すごい勢いで痩せ細る脚
・引かない腫れ
・60°しか曲がらない膝
当たり前のことだけど、脚は生きていて、成長するより衰えるほうが断然早い。俗に言われており、ちゃんと腹落ちをしていなかった「1日練習しなければ取り戻すのに3日かかる」まさにこれです。入院の終盤はまさに、動揺し続けました。
◯怪我を乗り越える力
選手はちっぽけなもので、1人では、何もできない。
今は受け入れる覚悟を決め、担当理学療法士さん、ドクターの皆様が与えてくれたベクトル(リハビリメニュー)で”怖さ”潰す。常に信じることで恐怖と戦い、自分の身体のことを言語化し、チームに頼り、超えていく。
「怪我を乗り越えたという選手」は強いっていうけど、アジリティ以上にここも乗り越えてきたから強いのかな?ということに気づきました。
原点回帰すると、なぜ復帰を目指すのか?
ーカッコ良い大人になるために、山の競技で舞い戻る。
膝にメスを入れてしまったけど、親には「穂高」という山の名前を与えられた。絶対に、山の世界に舞い戻ることから逃げてはいけない。
いっぱいできないことが、知らずに増えてていってることに気づく日々。
いっぱいできることが、増えていく幸せを感じる日々。
これからの競技生活に大切な大切な、多くの喜怒哀楽を感じる残りの225日。しっかり噛み締めて、財産として、未来のためにも強くなっていきたいと思う。
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