内臓トラブルが起きたときの考え方とLT値起点の省エネ運転の実践(恐羅漢65kmより)
レースの3分の2までは、ほぼオンタイムで走行し「さぁ、これから快速運転でプッシュするぞ!」っと思い、ジェルを接種した矢先、マーライオンのごとく突然のおう吐。そこからは何も補給できず、ダダつぶれの恐羅漢65km(D+4200m)。優勝タイムが7時間台のレースで、予定時刻を1時間近く遅延をし、当初は20位以内かと思った順位も37位。、、と「数字だけ」をみたら非常に無念な結果となってしまいました。
今回はレースの振り返りとともに、つぶれたときにチャレンジしたこと、そのベースの大切な考え方をまとめたいと思う。
〇レースの展開
今年の恐羅漢2019は中国地方でもトップクラスの難易度の高いレースで、メンバーもそろっていたレース。比較的走れるセクションやアップダウンきついセクションなど計3つのセクションに分かれ、日本でも数少ない「ループ型のレース」となっている(他には、koumi100とか野沢65kくらい?)。もともと中盤以降からプッシュする予定、かつ100kmのレースを想定して走っていたため、前半はまわりの選手と話ながら、そして天候もよかったため写真を撮りながらトレイルを楽しんでいました。
ただ異変はレース前から始まっており、レース前はお腹が激ゆる。スタート直後は「うっぷうっぷ」とゲップが出る状態。補給もレース前半から40分に1回はする予定が、最初の1時間30以上何も入れられる状態ではなく、初っ端から内臓トラブルが起きていることが明白だった。ただ、走れるためとりあえずペースは一定、補給も途中から予定通りでいくものの、ずっと心拍数が想定より5~10bpm以上高く、身体の黄色信号は常に点灯。気づいてはいたけど、押し切ってみたら案の定、レース残り3分の1で内臓が限界を迎え、吐き、見事に撃沈という、まさに「自爆」という展開でした。
〇なぜ、トラブルが起きたか。
今回のレースに向けた練習量、調整は完璧にできた中で、要因はレースではなく前日の「寝不足」。早く就寝するため布団に入ったものの大部屋で寝る中で、頭上の「時計のカチカチ音」が気になって全然寝れない(かつみんな寝てるから外せない)。睡眠記録用のロガー「fitbit」で確認しても「寝付けない」&「何回も起きる」&「眠り浅い」という展開となり、カーボローディングで補給した主に麺類の淡水化物君たちは全然消化されておらず、起きたらおなかはギュルギュル、レース中はゲップパレードとなり、限界を迎えたころには、何も受け付けない状態、となりました。。
結果的に「つぶれる」状態に陥ったものの、何とか水分は補給できたので、レースは続行。開き直って、なんならせっかく日々の練習ではできない状態になったため、超ポジティブ変換のもと、ある意味ニタニタしながら「粘る」という主テーマに方向転換を行いました。
〇トラブルの要因分解と心拍の閾値について
潰れてからそれ以降は、水分は補給できるものの、それ以外は入らないため主のエネルギー源の「糖質」がほぼ枯渇してしまう状態。大脳でも糖は使われてしまうため、早期で「打ち手&新KPI設定」が必要となりました。案外、事象を冷静にとらえていたため、瞬時にそもそものエネルギー源を以下の図でシンプル分解して描きました(超簡単な図)。
トレイルランニングのエネルギーは「補給」にしか目がいかないことが多いけど、「貯める」→「補う」→「変換する」という3つに分かれています。今回の状態だと、①「貯める」は既に終了(カーボローディングとか)。②「補う」が身体が受け付けず、トラブル発生。となると、対策を打てるのは③「変換する」という分野のみ。んで今回は、ファットアダプテーションの実践の機会もかねて、「粘る」というテーマで実行することを決めました。
一般的にエネルギーはLT値(AT値)という心拍数の閾値のラインで、閾値の下なら「糖質+脂質で消費」、上なら「糖質中心で消費」という2つに分けられます。ジェルが補給できない以上、「糖質の残エネルギーが極端に少ない」ため、残りは脂質中心で回す必要が発生しました。そのために起点となってくるのは、心拍数を絶対にLT値以下でおさめ、エネルギー不足(ハンガーノック)に陥らせないこと。ここの値(LT値)は、今回のレース直前に測定をしていたため、少し余裕をもってLT値の90%程度の心拍数の140bpm以下(白枠がログ)で走行することに。ほかにも「大脳の糖の消費を抑えるために、心拍数のみに集中。それ以外のKPIを消す(タイムや順位を無視)」「上下の動きを抑ええて、胃のシャッフルを防ぐ」という超省エネ運行を実践しました。
結果的に、約3時間半もの間を水分以外はほぼ無補給かつぶっ倒れることなく、遅延しながらもゴール。感覚的だったけど、ゴールする前には、かなり回復していた感じがします!(ゴール前だったからかな?笑)
〇まとめ
今回の事象「内臓トラブル」に対しては「起こさない」「起きてしまった」という2つのことに対し、経験し、振り返ることで大きな学びを得ました。前者は、エネルギーというものは大きく「3つの合算から成り立つもの」であり、当たり前だけどすべてに万全な準備をすることが大切。(次から、耳栓もっていこう。笑)
後者については、100kmや100mileというウルトラの属性は、何かしら内臓トラブルは起きてしまう。そんなトラブルが起きたときにやるべき3つが大切。
①冷静に事象を俯瞰(ふかん)して捉える。
②シンプルに可能な打ち手を絞り込む。
③打ち手に対し数値でKPIを定め、愚直にそれだけを実行する。
とくに②と③は大切で、しっかりとインプットした「知識を論理的に整理」し、可能な打ち手を「速攻で数値」で立てる。その上で、シンプルな数値に集中することで、辛い場面も乗り越えていける、ということを学んだレースでした。
昔読んでた大好きな本に、成長するには「仮説を立て、それを検証するために行動し、どっちに転んでも、ちゃんと振り返りを行うということ。仮説が正しいかどうかなんて、行動し続けることでしか分からないこと。」と書いてありましたが、未知のトレイルランニングの世界ではまさにこのこと。未知の道。いいね!楽しいね。ということで、精進します。
ちなみに、補給なしで身体のエネルギーのすべてを使い果たしたので、帰宅後は2kgも減ってました。笑
次節、NAGI52kmという厳しいレースですが、1か月後のメインレースPenang100kmに向けても仕上げて参ります。 次はこんな感じでずっと笑顔でレースを楽しもう!
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